関西の医薬品生産額は、全国の6割以上に達している。大阪には、「道修町」
と呼ばれる「薬の町」があり全国有数の製薬会社が軒を連ね、我が国医薬品の
製造・流通の中枢を占めている。1992年の統計では大阪の事業所数は355で全
国の31.9%を占めている。主要製薬メーカーの研究施設も全国94ヵ所のうち関
西には48ヵ所と非常に多い。
関西医薬品メーカーの歴史は、18世紀の江戸時代の和漢薬を扱う問屋まで溯る
ケースが多く、当初は、商業資本として成長した。その後19世紀に入り、洋薬
の輸入を経て海外から積極的に技術導入をすすめ、本格的な製造メーカーに脱
皮した。
現在でもタケダ、シオノギ、フジサワ、タナベなど大手の製薬会社が大阪市と
その周辺に本社を置いている。また、バイエル薬品、チバガイギー、日本ベー
リンガーインゲルハイム、日本シエーリングといった外資系製薬会社も、日本
での本社管理中枢部門、ならびに研究・製造部門を関西に置き、関西を世界的
な戦略拠点として位置付けている。
バイオテクノロジーの分野には、製薬会社のほか世界でもトップクラスの醗酵
技術を持つ酒造、食品メーカー、さらに繊維メーカーまで加わって開発競争を
展開している。近年は、研究開発への取り組みを重要視し、ガン治療用のイン
ターフェロンや、老人性痴呆症に有効な脳代謝活性物質の開発では、世界をリ
ードするまでになっている。
一方、ハイテク時代の技術革新にきわめて重要な役割を果す化学工業界では、
農業、医薬品、染料、化成品を中心とする分野で、日本の総合化学メーカーの
トップの座を競う住友化学や、高分子および発酵・バイオの分野を中心に世界
に業容を展開しているカネカなどがある。塗料業界では、日本のビックスリー
を形成する日本ペイント、関西ペイント、大日本塗料など古い歴史を誇ってい
る。
ファインケミカルは、21世紀を担う新化学と言われ、各社の経営戦略の中心と
して取り組まれている。電子材料、部品などエレクトロニクス関連、ファイン
セラミックス、新金属など新素材関連、天然物化学、ヘルスケアなど健康関連、
種苗、バイオケミカルなど農業関連など、それぞれの新分野でも研究・技術開
発の積極的な展開がはかられている。